その日は、晴れも晴れ。
雲一つない、あっぱれな天気。
けれど、何故だろう。
この広い青空を見ていると、無性に君に会いたくなって。
涙が、勝手にこぼれて溢れた。
――青空に重ねた君――
空を見上げて、不意にじいちゃんのことを思い出した。
「ぬはは」って笑うじいちゃん。その笑顔が、俺は大好きだった。
けれど、楽しいはずの思い出が、何故か急に悲しくなって、寂しくなる。
大好きな、はずなのに。
「ぬわっ!」
考えごとをしていて、手を滑らせた実験道具。混ざってはいけない薬品が混ざっちゃって、見事に大爆発を起こした。
う、うぬぬ、これは、早く片づけないと、ぬいぬいにゲンコツをくらうぞ!
そう思っていたら、
「大丈夫? 翼くん」
「うぬ? ?」
煙が立ちこめる中、聞こえた愛おしい声。何とか煙をかき分けていけば、心配そうな顔をした君がいて。
「ぬはは、ぬいぬいとそらそらには内緒な?」
「うん。それより、翼くん、怪我はない?」
聞いてくる、優しい。俺が、こんなにあったかふわふわな気持ちになれるのは、君のおかげだ。
「大丈夫。ありがと、」
俺が笑えば、君が笑う。そんな当たり前のことが、こんなにも嬉しくて。
「きゃ・・・っ!」
思わず抱きしめてみれば、小さな可愛い声が聞こえてくる。
俺より年上だけど、小さくて細っこい。ほんと、可愛い。
「…」
名前を呼べば、戸惑いがちに見上げる瞳。そんな彼女の頬に、キスを一つ落とす。
「うぬ〜」
「な、何…?」
唸る俺に、君は相変わらず真っ赤な顔。ぬはは、そんなとこも可愛いんだけど。
「やっぱり、ほっぺじゃ足りない」
「ん…ッ!」
言い終わるが早いか、奪った君の唇は本当に甘くて、優しくて。
大すきなんだ、君のこと。俺、まだまだ子供っぽいとこもあるけど、君だけは失いたくない。だから、頑張ろう、って、そう思えて。
「翼くん、泣いてるの?」
唇が離れた瞬間、戸惑いがちに聞く。
「あれ…?」
自分でも気付かないうちに流れたそれは、どうしてもとまらなくて。晴れてるのに雨が降ってる、そんな感じ。
「ぬはは、変だな、俺」
何とか笑ってみせるけれど、ちゃんといつもみたいに笑えない。本当に、どうしちゃったんだ? 俺。
そんなことを考えていたら、
「?」
ふわっと、俺を優しく包み込んでくれるように抱きつく月子。背の小さい彼女を、俺がしっかり支える。
「大丈夫、私は、ここにいるよ。いなく、ならないから。翼くんの、傍にいる」
「…」
それは、俺が一番欲しかった言葉。
確かな約束、なんて、信じてなかった。
でも、君の言葉なら、信じられる気がする。
「うん、俺も。傍に、いたい」
「うん」
俺の言葉に、優しく頷いてくれる。それから、彼女には珍しく、俺のほっぺにキスをくれて。
思わず、びっくりして涙なんか止まっちゃってた。
さっき以上にぎゅうぎゅう抱きついてくるは、きっと照れてるんだろう。見えなけれど、耳まで真っ赤なはず。
「ダメだよ、」
言って、そっと彼女を離す。そしたら、きょとんとした表情を浮かべると目があって、俺は、今度こそちゃんと笑えてた。
「さっきも言っただろ? ほっぺじゃ、足りない」
そう言ってみせたら、一瞬驚いた顔を見せたけど、すぐに目を閉じる。そんな彼女の優しさが嬉しくて、抱き寄せて、そっと口付けを送った。
晴れた日には、君の笑顔を思い出すよ。
ずっと、傍にいるって言ってくれた、あの言葉と一緒に。
そしたら、俺は強くなれるから。
ずっと、ずーっと、一緒にいよう。
あとがき:
あしかけ何カ月だろうσ(^◇^;)
リハビリ、リハビリ!(笑)
ちょこっと、課題に余裕を見つけて、ようやくの更新!
ずっと書きたかったお話だけに、
ようやく書けてうれしいです^^
こういう、弱い部分もみせる翼くんが大好きなのです(>▽<)
それでは、ここまでお読みくださり、ありがとうございました(>▽<)
〔2010.6.6〕
BGM by 西野カナ 『会いたくて 会いたくて』