もしも、君がいなくなったら。
朝目覚めた時の不快感は、今でも覚えている。久しぶりに感じた恐怖と絶望に、身体が震えた。それを忘れさせていたのは、きっとあいつのせい。
「お、響一。今日は早いんだな?」
気持ちが良いくらいに笑顔で声をかけられ、俺は思わずそいつに蹴りをくれてやった。案の定、すぐに抗議の声が入る。
「出会い頭に何をするんだ、お前は!」
「お前が勝手に死ぬからだ」
言うだけ言って、俺は目をそらす。
忘れていた、独りになるなんていうことは。だからこそ、夢にそれが現れた時は、夢とは知らずに戦慄した。たった1人の親友を、ただの夢の中でも失うことの恐ろしさに。
それだけ、幸せの時間が長かったということか。今更ながらにそんなことを思う。友がいる。妻や、かけがえのない子供達がいる。それが、当たり前なのだと。
「ったく、少しは丸くなったと思ったが、人間、根本にあるものは変わらんと見える」
俺の言っていることが解らなかったせいだろう、ぶつくさ文句を言っている。そんな姿に、俺は思わず笑っていた。
「ほんと、俺にそんな口を聞けるのは、お前ぐらいだよ」
どれだけ無碍にしても、俺のことを心配してくれるような奴は。その言葉は、決して口にはしないけれども。
俺に居場所を与えてくれたお前の、悟の頼みなら聞いてやろう。そうしてやることで、お前に何か恩返しが出来るなら、な。
あとがき:
昨日日記にアップした小説の、響一だったら、バージョンですね。
柊一にとっての翠は、響一の場合は悟でもあり由香でもあるのですが、ここは友情をとりました。
拍手お礼小説の中身に、少し考えていてまとまらなかった話に似ているかもしれませんが。
ほんとに、某漫画の影響のようでその影響が見られないような話です。
〔2005.5.22〕
BGM by アンダーグラフ「ツバサ」