刻の彼方
空が明るければ明るいほど、この心に闇が巣食っているのが解って、空が青ければ青いほど、ずっと昔に受けた傷痕が紅い涙を流す。
隠したくても隠し切れない感情があって、そっと目をそらす。見たくないと思っても、視えてしまうけれど。
そんな時は、君の笑顔を思い出すんだ。暗闇に射しこむ太陽の光のように、眩しくて、あたたかい。
今は、ただ側にいられれば良い。今はまだ。それさえ出来なくなった時は、想像もつかないよ…。
愛して欲しいとは言わない。ただ、お願いだから、独りにしないで。それがとりとめのないことだとしても、望んでしまうから。
君を護るためなら、何だってしよう。例え、それでこの身が砕けようとも。
君の笑顔を見れるなら、何度でも立ち上げれるから。だって、君は、
☆
「何やってるんだよ」
「うわぁ!」
そこまで書き上げたところで唐突に声をかけられ、思わず大声を上げてしまう。我ながら情けないと思いながらも、柊一は睨むような目つきで翠を見た。
「つーか、その台詞、そっくりそのまま返してやるよ。ここ、俺の部屋だけど?」
言ってやると、翠は不服そうな表情を見せる。そして、ため息までついてきながら言ってきた。
「刑事学の板書、貸して欲しいって言ったの誰だよ?」
「…あ。悪りぃ、サンキュ」
今更思い出し、侘びと礼を言ってさしだされたメモリーチップ――最新鋭の記憶媒体――を受け取る。このところ不調続きで学校にも庁舎にも顔を出していなかったので、翠が見舞いに来てくれると聞いた時、ついでに持ってきてくれるよう頼んでおいたのだ。
だが、一応寝込んでいた手前、ギターを抱えながらメモを取る姿勢で出迎えたのはマズかったらしい。思いきり胡乱げな目で見られる。
「で、何してたんだよ?自称38度の高熱保持者が」
「…あんまりにも暇だったんで」
翠の無言の圧迫を受けながらも、答えてみる。すると、案の定、翠が物言いたげな顔で睨んできたが、あえてそれは無視することすることにして、ギタースタンドにギターを戻し、ベッドに入ろうとしたが、
「うわっ!」
声を上げたのは2人同時だった。熱で朦朧とした状態で立ち上がったためにふらついてバランスを崩して倒れた柊一と、彼に巻き添えを食らう形で倒れた翠と。
そして、沈黙がものの数秒ほど。
「…何か、疲れた」
「…良いからどけよ」
そのまま翠に倒れ掛かるようにすれば、思いきり頭をはたかれる。それで、何とか身体を起こせば、先刻書いていた詞が目に入って、柊一は思わず笑みを浮かべた。
君が側にいてくれるなら、どんなにつらくても立ち上がれるから。どれだけ刻が流れても変わらない。君は、僕の救いだから。
あとがき:
WEB拍手設置から、ずっと今まで置かれていた拍手お礼小説です。
あまり長すぎないようにと心がけてはいたんですが。
突発的に思いついて、書き上げた作品です。
ちなみに、ページが開くと最上部にお礼と共にこんな文章がありました。
『前半は柊一の詞で、後半はその心情という感じで。
自分には絶対必要な存在。近くにいるからこそ、大事に出来る…。』
昔の自身の心境も密かにうかがえるものになってますね(笑)
〔2005.5.2〕
BGM by Janne Da Arc『ANOTHER STORY』