誰も奪わせない。

「ねぇ、柊一」
「あ? どした?」
 呼ばれて、目を向けてみれば、そいつは、すごく儚い雰囲気を漂わせていて。そのくせ、めちゃめちゃ意思の固い瞳をして、言ってきた。
「ぼくは、もう誰も傷つけたくない。悲しませたくない。だから、手伝ってくれないか? ぼくと一緒に、これからも、刑事を続けて欲しい」
 俺の意思を確かめるようにじっと俺を見てきて。こいつの想いは本物だって知ってる。それに、俺もこいつから離れられねェのは知ってるから。
 報われない想いを抱えてる自分自身に対してなのか、それとも、滅多のことでは俺に頼みごとなんかしない負けず嫌いな相棒に対してなのか、はっきりしないままに俺は笑いながら返した。
「当たり前だろ、聞くなよ、ンなこと。お前の想いは、俺が護ってやるから」
 言ってやれば、すげェ嬉しそうな笑顔を浮かべて頷いてくる。それだけで、こいつが、翠がここにいるって実感できるんだ。
 この笑顔をずっと見ていきたいから、この笑顔が好きだから、護り抜くと誓った。かけがえのない、想いを貫くために。





あとがき:
昨日、日記にアップしたものです。
もうかよ、という感じなんですが、やはり気になりまして。
それにしても、こんなSSSのようなものは初めてじゃないでしょうか。
もともと短くまとめるのが苦手なので、余計にこういう短いものが少なくなりがちですね。
また機会があれば書いていきたいかと思います。
〔2005.5.22〕
BGM by GARNET CROW「忘れ咲き」