今日は、星が瞬いてる。
 明日は、きっと晴れるやろう。


――移ろい空――


 夜の空気は、どこか冷たい。それでも、彼女は、そんな空の下におった。
「何してるん?」
 後ろから、声をかけてみる。そしたら、美咲は、振り返りもせずに答えた。
「別に。あたしがどこ行こうが勝手だろ?」
 そらそうやけども。そんな身も蓋もないこと言わんでもええやろ?
 そう思ったけど、口には出せやんかった。絶対、ただではすまん。そんな気ィするしな。
「あんたこそ、まだ帰んないわけ? とっくに仕事終わったんでしょ」
「まぁ、そうやけど…」
 美咲のことが心配やから、なんて言うたら、それこそ怒られそうな気ィするわ。
 そんなことを考えて、思わず苦笑する。
 思えば、上京してきて、刑事になって、美咲に会うてから、無下に扱われやんかったことなかったかもしれへんなぁ。男勝りな性格で、口は悪いわ、どんだけどつかれたことか。
 けど、
「美咲のこと、やっぱり放っとかれへんねん」
「はっ、あんたに心配されたんじゃ、あたしも終わりだね。っていうか、うっとおしい」
 あぁ、やっぱりな。ほんまに、憎まれ口しか知らんのか、こいつは。
「あんまり、うっといとか言いなや? さすがに傷つくで?」
「へぇ、あんた、そんなに繊細だったんだ?」
「うわっ、酷ッ!」
 美咲の言葉に思わず声高に言ってやれば、美咲もようやく笑顔を見せる。それに安心して、俺も思わず笑ってしもた。
「なぁ、美咲?」
「何?」
「俺な、やっぱり、上京してきて良かったって思うわ」
「え…?」
 俺の言葉に、美咲は面食らったような表情を見せた。急にそんなこと言い出したからかもしれんな。けど、ほんまにそう思ってん。
 昔は、地元に留まってるんが嫌やった。別に、和歌山が嫌いなわけやない。めっちゃ田舎やけど、ええとこもあるし、俺は、あの環境が好きやった。ただ、こんなとこにくすぶっとってええんか、ってそう思ったんや。
 あの時、漠然と抱いてた希望。でも、今はそれがこんなにはっきりと目の前にある。お前のおかげでな。
「変な奴だな? あぁ、お前は元から変か」
「美咲〜ぃ」
 タバコを片手に笑ってみせる美咲の言葉に、俺は思わず情けない声を出してしまう。けど、美咲はそれを笑顔で払うと、煙草の火を消して、俺に背を向けてから言うた。
「あたしも、有哉に出会えて良かった」
「ッ…!」
 美咲にしては珍しい、素直な言葉。それが、お前の、ほんまにほんまの本心や、て、思ってええんやろか? 俺は、期待してもええんやろか?
「美咲〜!」
「だぁもう! 抱きつくな、うっとうしい!」
「あぁッ、またうっといて言うた!」
 美咲がいつも通りきっついこと言うて俺の手をはたいてくるんに、俺は冗談めかして悲しげに言うてやる。けど、それが冗談やて思ってるうちは、美咲も容赦なかったけどな。

 お前からは、すきも、愛してるも、いらん。別に言えやんでもええねん、そんな台詞。お前の想いが、俺に向いてるてわかるんやったら。
 やから、そんなにうっとしがらんと、俺に構ったってな?
 お前が笑ってくれるだけで、俺はいくらでも元気になれるんやから。





あとがき:
日記に上げた、2周年記念の小説のうちのひとつです。
唐突に思いついた、有哉視点の話です。
要は、関西弁で書いてみたかったっていうのが大前提なんですが、
美咲と有哉にあまりスポットを当てたことがなかったなぁということで書いた話でもあります。
また、彼らが登場する過去話なんかも書いていければ良いのですが。
〔2006.5.6〕